※ 記事を投稿してから数日間は、加筆修正を繰り返すことがあります。
札幌から車で1時間のところにある栗山町。ここに、小林酒造があります。
現在でも使われているレンガ造りなどの建物群は、日本遺産「炭鉄港」の構成文化財となっています。(13棟は、国の登録有形文化財に指定されています)
・炭鉄港とは:明治から昭和にかけての北海道の近代化そして日本の発展を支えた空知地方の石「炭」・室蘭の「鉄」鋼・小樽の「港」湾・それらを繋いだ鉄道の歴史の物語、「北の産業革命」のことです。
石炭や鉄、港に鉄道は、近代化や発展に大いに貢献したことはイメージできるかと思います。しかし、日本酒の蔵は…。炭鉄港との結びつきは感じられないかもしれませんね。
なぜ酒蔵が、炭鉄港と関係があるのでしょう?
この謎を紐解いてくれるであろう「炭鉄港特別ツアー」が開催されました。
通常10名以上の団体でないと参加できない酒蔵(旧蔵)見学を、なんと1人でも参加できるツアーとして実施されるのです。さらに、炭鉱の歴史などを絡めて説明していただけるという特別版となっています。
私は、今年6月20日(土)実施の第1回に参加しました。
参加の前に、小林酒造や炭鉱との関わりを少しでも頭の中に入れておこうと思い、以下リンク先で予習しました。(結果的に、予備知識がなくても、ツアーを十分に楽しめました)
参加者は31名。
ガイドを務められるのは、小林酒造の本田さんです。彼の挨拶からツアーは始まりましたが、大変聞き取りやすい声を持つ方、という印象を持ちました。
第一印象、大事ですよね。
工場見学では撮影不可というところも多いですが、こちらでは嬉しいことに、「写真・動画を山ほど撮って、どんどん紹介してほしい」とのことでした。
さらに、配布された資料のネットなどへの公開も問題なしでした。
このブログでは、写真や資料(一部となります)に、ツアー中に説明されたことを付け加えてまとめてみました。
(1)蔵に入る前
潜水艦のようなものが、2つ置かれています。
別角度から。
これは、「多管式蒸気機関」。蒸気を起こすボイラーです。昭和の中期まで実際に使われていたものです。
日本酒造りというと、米・水・造る人(杜氏・蔵人)が注目されがちですが、蒸気も大変重要でした。米を蒸す以外に、酒造りに使う道具を汚れ落としと殺菌に使っていました。(洗剤は、匂い移りや混入のおそれがあり、使用しなかったとのこと)
このボイラーを動かすのに使った燃料は・・・石炭でした。
おっ、炭鉄港と繋がってきましたね。
ここで、小林酒造の歴史を見てみましょう。
小林酒造は1878(明治11))年に札幌で創業し、1900(明治33)年に栗山に移ってきました。
なぜ、栗山だったのでしょう。その理由は…。
夕張から鉄道を通って運ばれてきた石炭を買い取り、出来た酒は、今度は夕張に運び売っていく。これには、北海道炭礦汽船(北炭)との一手納入契約(独占契約)がありました。夕張(の炭鉱)で販売できるのは小林酒造の清酒のみ、ということになります。つまり、炭鉱従事者が飲むことができる酒は、小林酒造のものだけなのです。
これにより、同社が札幌にあった頃より、売り上げが大幅アップ。二代目小林米三郎が社長の時に(売り上げは)ピークを迎え、小林酒造は北海道有数の酒蔵へと飛躍しました。
他に、移転の理由として夕張川がありました。酒造りに必要な豊富な水を確保できると同時に、水運の利用も考えていたようです。
酒造りや販売に適した場所ということで、移転先に栗山を選んだのですね。
それでは、蔵の中に入りましょう。
足元にレールが残されtれいます。
かつては出荷の際に使われていたのがわかりますね。
冒頭で、こちらの建物群が「炭鉄港」の構成文化財となっていることを書きましたが、それらは以下の建物となります。
(2)蔵に入ってから
蔵の中に「開放厳禁」 の札がかけられた扉があります。ここは三番庫の入口です。
両側にタンクが並んでいます。ここは酒をタンクによって貯蔵する場所です。
他に、ラベルを貼る前の瓶に詰めただけの状態で保存する「瓶貯蔵」もあります。
1024タンクの前で、詳しい説明がありました。
真ん中にある数字「7.492」。これは、タンク満タンに入れた時のリッター数です。
タンクが同じような大きさでも、リッター数は違う場合があります。タンク内のガラスコーディングには歪みとズレがあるからです。
なぜ、中に入る量を正確に把握しているかというと、税金が絡んでくるからなのです。
ちなみに、だいたい7.500リッターで、一升瓶が約4.500本になる計算になります。
どのくらいの量か、想像つきますか?
20歳の時にタンク(7.500リッター入り)を1基買って、毎日1~2合飲んでも、80歳になるまでの60年間も持つとのことです。
このようなタンク(大きさの違うのもあります)は、現在40基あるとのことでした。
タンクには、マグネットシールが貼られています。これはタンクに酒が入っているという「しるし」となります。
拡大しましょう。
「R6BY」と書かれています。「令和6年醸造(酒造)年度」という意味です。
BYは“Brewery Year”の略です。
しかし、日本酒の醸造年度は、7月から始まり翌年6月に終了するのが一般的です。なお、小林酒造では、10月から翌年9月までを一つの年度として捉えており。「R6BY」とは令和6年10月から令和7年9月の間に造ったお酒ということになるのです。
※ もともとは、他の酒蔵も年度を10月1日から9月30日までとしていました。
酒屋さんに行った時は、「新酒ください」というよりも、今時期ですと「R7BYください」と言うと、ちょっと驚かれるのではないでしょうか? と話されていましたよ。
三番庫を出て、蔵内の次の場所に移動します。
途中にあったこのタンク。先ほどのと比べると大きさが違います。
この1210タンクの容量は、23.892リッター。先ほど見たタンクの約3倍もの量が入ります。こちらで貯蔵していたのは、炭鉱向けでした。
肉体を酷使する炭鉱従事者が欲したのは、甘い酒でした。体を酷使していたからでしょう。かつて、この約24.000リッターのタンクが、1~2週間で空になるほどの出荷量があったそうです。
小林酒造は、炭鉄港の「石炭」を掘る従事者を、食(飲む)の面から支えていたのですね。
しかし後には、この甘く安い酒が経営に響くようになったのでした。炭鉱が閉山してからは一般家庭に向けての販売に切り替えますが、こぼれて手にでもついたらべとべと、そして、飲んだら翌朝頭が痛い。こうした理由で返品の山となり、売り上げが急降下。限界ラインを下回り酒造りが出来なくなり。当時蔵にいた40~50人が、近くのコンクリート工場に働きに行ったこともあったそうです。(その期間は1年間)
そのような時に、三代目を襲名した小林米三郎が考えていたのが、道産米で酒を造ること。とはいえ、当時の道産米は「ススメもまたぐ」と言われるほど美味しくなかった。そして酒米ではなく、私たちが口にするお米。
2年も3年も試験を繰り返し、タンク一本分の酒が出来上がりました。それを「新酒鑑評会」に出品したところ、金賞を受賞。
以降、徐々に原料を道産米に切り替え、2009(平成)21年には「すべて北海道のお米しか使っていない」と言えるようになりました。売上絶好調→(炭鉱閉山で)経営危機→酒造りを見直し「高品質化」へ。 そして今年2026年、105年ぶりに新しい蔵を完成させ稼働を始めました。
製造工程を見ることができる場所に来ました。
ここで各機械の説明がありましたが、(各機械の)写真を撮ることはなく、説明を聴いただけでした。
製造工程(あくまで小林酒造の)を記した資料をを載せておきます。
(3)見学を終えて ~ KEG DRAFTによる量り売り(自分で瓶詰)
KEG DRAFT SAKE。圧縮充填という技術を使って、新鮮な味わいをそのままお届けする日本酒のことです。
私、初めて聞きました。
しばった直後の日本酒には、発酵過程で自然と生まれる微発泡の炭酸ガスや、もぎたての果実のようなフレッシュ感があります。それを圧縮することで炭酸ガスを液中に閉じ込め、特殊な圧力容器に充填することで、しぼりたての鮮度を長時間維持することに成功しました。
これにより、いままで酒蔵でしか飲むことができなかった「しぼりたて」の味を、ご家庭などで楽しめるようになったのです。
これを自分で300mlの瓶に詰めるのです。最大250g入れることができます。グラム単価は5円。安くはありませんが、このような機会は滅多にありません。
参加者の多くが、瓶詰(=購入)に挑戦していました。
サーバーから注ぐ加減が難しいです。でも、なんとか詰めることができました。
私、不器用なんですよねー。
自宅で飲んでみると…。日本酒というより白ワインのような感じでした。
うーん、表現力が不足しており、これくらいのことしか言えませんでした😓
最後には、お土産までいただきました。
この木札、シリアルナンバーが刻印されています。
紐がついているので、KEG DRAFTを購入したら、その瓶にかけておいたらどうでしょう? とガイドさんから提案がありました。もちろん他の瓶でも良いですね。できることなら、小林さんのお酒が相応しいかも。
この木札(ノベルティ)は、栗山町産「未利用材」で作られています。
こうして約2時間の炭鉄港特別ツアーを終えました。
ガイドさんの説明が丁寧で、小林酒造と炭鉱との結びつき、炭鉄港との関係、日本酒の作り方がよく分かりました。
そして、炭鉱とともに歩んだ酒蔵の歴史は、私たちの人生に通じるものがあり、逆境でも決して諦めてはいけないことを教えられたようにも思いました。
酒蔵見学、参加して良かったです。
日本酒好きの方は勿論のこと、そうでない方も。そして炭鉄港に興味のあるなしに関わらず、満足出来るツアーかと思います。
今年は、いままで3回実施されていますが、9月19日(土)に4回目が開催されるようです。
今回取り上げたのは、説明を受けた中での一部です。
機会がありましたら参加されて、ガイドさんによる楽しくてためになるお話を聴きながら、酒蔵見学を楽しまれることをお薦めします。
最後に、写真をもう1枚。
ツアーでは案内されませんでしたが、こちらが新酒蔵「八番蔵」です。
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※ 運転される方で、直売所での試飲をお考えの場合は、JRかバスのご利用を。以下、札幌基準となりますが、時刻などを調べてみました。
・JR利用は
札幌駅を8:02に出発する岩見沢行きの普通列車に乗れば、岩見沢駅着が8:44。9:03発の苫小牧行きの普通列車に乗り換えれば、9:25に栗山駅に到着です。駅から徒歩10数分で小林酒造に着くので、10時開始のツアーに間に合います。(時刻は、いずれも2026年8月時点)
※ Googleマップでは、栗山駅の駅舎(東側)から歩くルートが表示されますが、東西連絡通路を通り西側から歩き始めた方が、僅かに距離が短くなります。
・バス利用は
ツアー時間の10時には間に合いませんが、中央バスの「高速くりやま号」は乗り換えなしで栗山に行けるので、大変便利です。札幌→栗山、栗山→札幌ともに、1日7便あります。
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